中国で同性愛者など性の多様性をもつ「ＬＧＢＴ」の人権を抑圧する動きが強まっている。少なくとも５千万人と推定されている中国だが、テレビ番組や映画に加え、ネット上でもＬＧＢＴを肯定する表現が禁じられた。
中国ではＬＧＢＴへの差別や偏見が根強いが、５年に１度の共産党大会を秋に控え、“社会秩序の維持”を口実に習近平指導部が規制を強化したとの見方がある。一方、ＬＧＢＴの人たちや家族は、中国社会の理解を得ようとさまざな挑戦を始めている。（上海 河崎真澄）
「ただちにここを立ち去れ！」。上海市中心部の人民公園で５月、露天商の無許可営業や違法駐車などを取り締まる「城管」と呼ばれる治安要員の怒号が響いた。
ＬＧＢＴを息子や娘にもつ数十人の母親らが、レインボーカラーに塗り分けられた傘を地面に置き、子供の経歴書や写真を見せ合って「お見合い相手」を探していたときのことだ。
城管に強制撤去させられた同性愛者の息子をもつ母親の朴春梅さんは、「追い出されたことは事件としてニュースで流れ、ネットで蔑視に満ちた批判にさらされました」と話した。城管を非難するコメントは当局が相次ぎ削除し、厳しい批判のみが残ったようだ。
朴さんは河北、広東、福建などの各省、北京市にも組織が広がる「同性愛親友会」の上海代表。強制排除にもめげず、７月には上海市内で「いかに両親や周囲に『出櫃』（カミングアウト）するか」をテーマにした座談会を開いた。ＬＧＢＴへの理解が低い中国社会は、カミングアウトに大きなリスクが伴うからだ。
座談会で２９歳の中国人男性は、「自分が同性愛者と気づいてから何年も悩み抜いた末、すがる思いで打ち明けた母親は激しく取り乱し、家族で僕を精神疾患の病院に連れて行った」と明かした。中国は同性愛者を１９９７年まで「流氓（ならず者）罪」とする犯罪者扱いしていた。
朴さんらは「今でも中国ではＬＧＢＴの人権はないがしろにされている」と考えている。中国政府は昨年３月、テレビ番組でのＬＧＢＴ描写を禁じ、検閲を強め始めている。
映画にも検閲が広がり、さらに今年６月にはネット視聴のソフトでも同性愛などの自由な表現を禁じる「ネット視聴コンテンツ審査規則」が通過した。偏見に満ちた人権軽視は、今秋に共産党大会を控え一段と厳しさを増している。
ただ、スペインの人口にも匹敵する約５千万人のＬＧＢＴと、その数倍の人数がいる家族も巻きこむ人権の抑圧は、むしろ新たな社会混乱を招きかねない。閉鎖的な中国社会で、ＬＧＢＴの苦悩は続いている。
◇
【用語解説】ＬＧＢＴ
多様で個性的な性のあり方の総称。愛情を抱く相手として、女性が対象である女性のレズビアン、男性が対象である男性のゲイ、男女の両性とも対象のバイセクシュアル、生まれ持った身体の性別に違和感があり、別の性で生きたいと望むトランスジェンダーの頭文字を取った。日本でも約１３人に１人がＬＧＢＴに該当するとの調査結果がある。
http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010039-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010039-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010039-n3.html
![【中国】ＬＧＢＴ抑圧強める中国 お見合い集会に響く治安要員の怒号 共産党党大会控え検閲も加速[8/01] [無断転載禁止]©2ch.net YouTube動画>4本 ->画像>7枚](http://www.sankei.com/images/news/170801/wor1708010039-p1.jpg)
クルーズ船で写真を撮る中国のゲイとトランスジェンダーのカップル＝６月１４日、上海（ロイター）
中国ではＬＧＢＴへの差別や偏見が根強いが、５年に１度の共産党大会を秋に控え、“社会秩序の維持”を口実に習近平指導部が規制を強化したとの見方がある。一方、ＬＧＢＴの人たちや家族は、中国社会の理解を得ようとさまざな挑戦を始めている。（上海 河崎真澄）
「ただちにここを立ち去れ！」。上海市中心部の人民公園で５月、露天商の無許可営業や違法駐車などを取り締まる「城管」と呼ばれる治安要員の怒号が響いた。
ＬＧＢＴを息子や娘にもつ数十人の母親らが、レインボーカラーに塗り分けられた傘を地面に置き、子供の経歴書や写真を見せ合って「お見合い相手」を探していたときのことだ。
城管に強制撤去させられた同性愛者の息子をもつ母親の朴春梅さんは、「追い出されたことは事件としてニュースで流れ、ネットで蔑視に満ちた批判にさらされました」と話した。城管を非難するコメントは当局が相次ぎ削除し、厳しい批判のみが残ったようだ。
朴さんは河北、広東、福建などの各省、北京市にも組織が広がる「同性愛親友会」の上海代表。強制排除にもめげず、７月には上海市内で「いかに両親や周囲に『出櫃』（カミングアウト）するか」をテーマにした座談会を開いた。ＬＧＢＴへの理解が低い中国社会は、カミングアウトに大きなリスクが伴うからだ。
座談会で２９歳の中国人男性は、「自分が同性愛者と気づいてから何年も悩み抜いた末、すがる思いで打ち明けた母親は激しく取り乱し、家族で僕を精神疾患の病院に連れて行った」と明かした。中国は同性愛者を１９９７年まで「流氓（ならず者）罪」とする犯罪者扱いしていた。
朴さんらは「今でも中国ではＬＧＢＴの人権はないがしろにされている」と考えている。中国政府は昨年３月、テレビ番組でのＬＧＢＴ描写を禁じ、検閲を強め始めている。
映画にも検閲が広がり、さらに今年６月にはネット視聴のソフトでも同性愛などの自由な表現を禁じる「ネット視聴コンテンツ審査規則」が通過した。偏見に満ちた人権軽視は、今秋に共産党大会を控え一段と厳しさを増している。
ただ、スペインの人口にも匹敵する約５千万人のＬＧＢＴと、その数倍の人数がいる家族も巻きこむ人権の抑圧は、むしろ新たな社会混乱を招きかねない。閉鎖的な中国社会で、ＬＧＢＴの苦悩は続いている。
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【用語解説】ＬＧＢＴ
多様で個性的な性のあり方の総称。愛情を抱く相手として、女性が対象である女性のレズビアン、男性が対象である男性のゲイ、男女の両性とも対象のバイセクシュアル、生まれ持った身体の性別に違和感があり、別の性で生きたいと望むトランスジェンダーの頭文字を取った。日本でも約１３人に１人がＬＧＢＴに該当するとの調査結果がある。
http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010039-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010039-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170801/wor1708010039-n3.html
クルーズ船で写真を撮る中国のゲイとトランスジェンダーのカップル＝６月１４日、上海（ロイター）
